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第368回 ~110円超え安定には時間が必要~

2020年01月15日

約8か月ぶりの110円台は定着しないであろう。これが今の気持ちである。ただ、予想外の早い円安進行で、実のところ驚いている。

筆者は、いずれ110円台は来ると予想していたが、但しそれは一回円高になった後、と考えていた。イランの報復攻撃を受けて、これは全面戦争だと、一層にリスクオフ機運の高まりで短期的には107円割れもありうると読んでいた。しかしあにはからんや、であった。

107.65円を底にドルは急上昇。昨日(1/14)、110円を突破、110.21円までドルは買われた。「こんなにあっという間に円安の波が来るとは!」と、相場の展開の速さに驚いている状態だ。金相場も1,611ドルから1,535ドルへ、原油(WTI)も65.5ドルから58ドル割れとそれぞれ急落、先週取り上げたVIX指数も昨日は12.39と下落、市場の高揚感も落ち着いてきたように見える。そして今日もドルの底堅さは変わらず、110円ばさみで推移している。では、はたしてこのままドル高の勢いは続いていくだろうか。

個人的には、ドルは相変わらず不安定であり、そう簡単にドル高は定着しないと予想している。その理由は、まず、トランプ大統領の行動パターンである。確かに11月の大統領選挙での再選を狙って、自分に不利になることは行わない、すなわち自分の行動や発言が株下落をもたらしたら、すぐに相場を逆転させる手を打っている。今日調印される米中合意であり、イランとの報復合戦の停止がその例である。この点ではドル安はあっても一過性で終わるとの考え方も理解できる。

しかし、別の見方をすれば、自分の手柄や貢献を作り出すために、波を立て続けるとも言える。その手法が再選に役立つと考えているに違いないと思えるからだ。今、そのための「種」はたくさんある。国内では、例えば弾劾問題、FEDへの利下げ圧力であり、外交面では米中、イラン問題、国際機関(NATOや温暖化条約など)からの脱退発言など、枚挙にいとまがない。そして今月下旬にスイスのダボス会議に2年ぶりに参加することが伝わってきた。否が応でもその発言は注目される。

また、次に米景気動向も注目したい。これまで発表された景況感や雇用統計は、後退を確認できるわけではないが、これまでの安定感を考えれば、「あれっ?」と思わせる変化もでてきている。筆者がフォローしている米国経済強気派の発言からも微妙な変化を感じさせる。これまでは、どんなことでも「心配ない。UPが続く」でコメントしていたが、最近は「経済学的に。。」とか、「分析手法は。。」など、急に理屈っぽくなってきた。趣旨を変える前触れかもしれない。

「2020年には、リセッションは来ない。大統領選後の2021年は要注意」が市場のコンセンサスだが、筆者も同感だ。トランプ大統領は、人一倍、今まで以上に市場の風の変化に敏感でなければならない。金利変動のボラティリティが高まれば、為替市場も影響を受ける。情報前取りの精神である。

また、相場変動パターンでは、一気にレンジが上方に変化していく兆しには見えない。昨年の傾向として、レンジが移動する時は、1円以上の相場変動が起こっている。過去3か月は、中心レンジとして108.50円~109.50円の間で取引されているが、今回の110円台乗せには、大きくレンジを変えるという力強さがない。一方、移動平均では、週足では89週線が109.93円、月足では短期(21月)線が109.97円と、まさに今もみ合っているレベルである。コンスタントに110円を超えるには、この水準をクリアに超え続けなければならない。

今後1週間は、地政学的リスクの有無に加え、米国経済指標に注目したい。ドル円は、108.75~110.25円、ユーロは、対ドルで1.1050~1.1200、対円では121.00~123.00円、また英ポンド/ドルは、EU離脱に関する議論を見ながら、1.2900-1.3200とポンド軟調を予想している。

(20/1/15, 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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