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第372回 ~始まった米国のドル高牽制~

2020年02月12日

110円を目前に、円は動きを止めた。先週木曜日から今日(午後3時現在)まで過去5日間の変動幅は109.53円~110.02円までのわずか49銭、固定相場制に戻ったような小幅な値動きである。まさに綱引き(Tug of war)だ。

この動きを、円はリスクオフ通貨としての力が後退していることを示していると見る向きがある。この観点から言えば、ドルの強さが維持されれば、いずれ110円の壁はあっという間に崩れ、壁(シーリング)でなく床(フロア)になり、相場取引レンジは、110円~112円になる日も近い、ということになる。以前は、ドル、円ともリスクオフで買われる通貨と言われたが、もはやそうは言えなくなっているとの考え方だ。

ところで、米ドルの相対的な強さを示すドルインデックスは、2月3日から6連騰、2/11には約4か月ぶり高値となる98.952(2/11)まで上昇した。高値98.952は4か月ぶりであるが、その間の相場展開を見ると、ドルがより強くなったとは言えないことがわかる。4か月間の動きをみると、ドルインデックスは12/31の安値96.355を折り返し点にして、前半は2.74%下落、後半は今日まで2.70%の上昇と、合わせて行って来い、4か月前の水準に戻っただけの値動きであった。

一方円相場は、4か月前と言えば、108円がらみで、ドルインデックスと同じ期間割をすると、前半は0.76%の円安、後半も1.09%の円安で、4か月前から徐々に下落、過去4か月では2円(1.85%)の下落となる。スナップショット的に比較すると円は確かに安くなっていることがわかる。

 ただ、ほかの通貨の下落割合を見れば、まだ円の下落幅は小さいので、リスクオフ通貨としての面目は維持している。具体的には、ユーロは、ドイツの政治的不安定さが増したことを背景に1.09割れまで下落、1.0891(2/11)と、昨年10/1以来の安値を付けた。1.0879を下回ると、2017年5月以来の安値となる。カナダドルは。1.3329と売られ昨年10月10日以来の安値を付け、英ポンドは昨年11月27日以来の安値となった。加えて豪ドルに至っては、0.6660(2/10)と2009年3月以来の安値まで下落した.

 この点では、円の下落幅は小さく、かろうじてリスクオフ通貨の地位は保っているが、新型コロナウイルス肺炎の感染状況や、それに影響を受ける企業業績の悪化具合によってはその立場は返上しなければならないときが来るかもしれない。あるいはすでにその動きは出ている可能性もある。

しかし一方で、この見方に対抗するルールが米国商務省から発表された。2月4日に出された「不公平な通貨安を補助金とみなし相殺関税を適用する最終ルール(Final Rule for Countervailing Unfair Currency Subsidies)」である。トランプ大統領が考える(と筆者が想定している)レッドラインは、100であるが、その相場までの余裕はわずか。これ以上円安が進むと、円安に対するトランプ大統領からの牽制が出てくることも意識しておかなければならないとも読める。

大統領に就任した時(2017/1/20)のドルインデックスは100.64で、それ以降のトランプ氏の発言と相場の関係を見ると、とても分かりやすい。100を超えると「ドルは強すぎる(2017/1/13)」と言い、90を割ると「強いドルを望む(2018/1/25)」と発言。これらから、筆者は100をレッドライン、90をグリーンライン、その中間の95をイエローラインと呼んでいる。今は、99前後、まさにレッドラインに近付いている。この観点から、ドル円は110円を超えても一時的、徐々に円高方向に進んでいくと予想できる。

今後1週間は、ドル円は、109.50~110.50円、ユーロは、対ドルで1.0850~1.1050、対円では118.50~120.50円、また英ポンド/ドルは、1.2900-1.3100と予想している。

(2020/2/12, 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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