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第173回「どうやって紛争を処理するのか?」

2020年02月03日

株式会社マネーパートナーズ ホームページ寄稿     二〇二〇年 二月

 一月十五日に懸案の米中貿易摩擦解決に向けた第一段階の合意がやっと調印された。残念なことに、一週間も経たないうちに、新型肺炎騒ぎが大きくなって米中合意の効果は霞んでしまった。しかし調印直後の感じでは、マーケットはそこそこに評価していたが、専門家やメディアの反応は好意的ではなかった。曰く、この合意は貿易不均衡の数量的な側面に対応しているだけで、構造的な問題、つまりサイバー盗難行為とか産業補助金とか技術支配という問題をカバーしていない不十分なものである。さらに、数量的な合意を優先する結果、市場原理を無視して、むしろ中国を管理貿易の方向に追いやることになる、という批判である。

 こういう批判は正確を得たものであろう。しかし、トランプと習近平の両者が置かれている国内事情を考えれば、一回の合意ですべてが片付く筈はなく、多くの課題が第二段階以降の合意に先送りされるのも止むを得ないことだろう。

 しかし、第一段階合意には長期的構造的意味合いを持った重要な問題が含まれていることを認識しなければならないと思う。それは通商問題における紛争処理の在り方である。第二次大戦後のブレトン・ウッズ体制下においては、伝統的に、貿易紛争は複数の審判官のグループによる調停によって裁決されるというルールが受け入れられてきた。WTOはその象徴である。

 皮肉なことに、米国を始めとする先進国が2001年に中国の WTO加盟を認めた時、先進国側は加盟によって中国はWTOルールに従うようになるだろうと期待していたのである。しかし、実際に起こったことは中国が米国からのさまざまな二国間の要求を多国間の調停の場にシフトし、そこで求められる煩雑な手続きを活用して、骨抜きにしてしまうという事態だった。

 そして米国はこのような状態は米国の主権と法律を無視するものだとして、WTOに対する姿勢を反転させたのである。

 第一段階合意では米中間の紛争はWTOに付託されるのではなく、両者間の三回の交渉に委ねられる。そしてその結果が満足できなければ、米国は関税を引上げる権利を持つ。中国も同じ権利を持つが、中国の関税引上げの余地は米国に比べればはるかに規模が少ない。合意を破棄しなければWTOに提訴することもできない。

 こう見ると、第一段階合意は紛争処理に関する限りは相当に米国寄りの合意だと云えるだろう。紛争処理の原則が歴史的転機を迎えたと云えるかもしれない。中国内での合意達成の必要性がそれだけ大きかったということだろう。

 しかしこれで米国が勝ったわけではないのは勿論である。問題は、単なる貿易不均衡の改善だけでなく、先に述べた両国間の長期的構造的な経済の相克が解消できるのかどうかなのである。楽観的な観方は、第一段階合意を契機として、米中の双方が本来のWTOの精神を受け入れて、それに則った行動をすることである。しかし、そうならなければ、起こりうることは両者の相互不信が引き続き、両者共本格的な衝突を望まないだろうから、時々、第二段階、第三段階の合意を繰返しながら、時が解決するのを待つということだろう。

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プロフィール

  • 著者近影 行天 豊雄(ぎょうてんとよお)
    1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒業後、大蔵省に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。89年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学の客員教授を経て、92年から96年まで東京銀行会長。95年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。2016年10月より同研究所の名誉顧問に就任。98年には小渕首相の助言役として内閣特別顧問を努めた。著書には「富の興亡-円とドルの歴史」(東洋経済新報社)など。


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